ずれてくる意識

 別れ際に目が合った。何かを言おうとしたが、言葉にはならなかった。
そのときの彼女の顔をおいらは今でもはっきりと覚えている。
 
 知り合いの男と飲んでいた。
 つまらないこんなことなら家でTVでも見ていたほうが良いかなと思いグラスに残った
酒を空ける。
 誰かが入ってくる気配を感じドアのほうをる。よくこの店で見る男の顔だった。
その男はおいらの隣に座った。
「どうも」
「おう」
ぞんざいな言い方をする男だった。
おいらはいつもはそんなに気にはならなかったが、しばらくぶりに
ぞんざいな言い方をされ、少し嫌な気持ちになった。
「もうちょっと横にずれろ」
男は犬でも扱うようにおいらに言った。
この男は口の利き方を知らない。おいらだけにだけではなく
誰にもそうだ。何でそんなに偉いのだろうかとおもう。

 何も言わずに 少しずれたのはおいらのささやかな抵抗だった。

 男は一人で退屈なのだろう。何かとぞんざいにおいらに話しかけてくる。
おいらはそのぞんざいな口調が、きにいらなかったので話にはのらなかった。
 男は面白くないのだろう。誰かを携帯で呼び出していた。
ちょいと前だったら酒の肴で誰とでも話しながら飲んだのが
最近は静かに飲むことが好きになってしまった。
きっと頭が正常になったことを意味するのかもしれない。

 ちょうどグラスの酒は空になった。
 もう一杯は飲む気はしない。
 
 


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